情報通信研究機構(NICT)
AI協調RANは基地局だけに頼らない
6Gの電波効率を高める鍵は、端末と基地局を別々に賢くすることから、両者が協調して通信を配分することへ移る。NICTは2026年10月23日、端末側とネットワーク側のAIを連携させる委託研究を公募した。方式が低電力で安全に動き、機器同士が相互接続できれば、満員電車でも通信を待つ時間が減る。
混雑した駅や会場では、利用者は限られた電波を分け合う。動画は止まり、決済に時間がかかる。通信事業者はこれまで、周波数や基地局、設備を増やして容量を確保してきた。利用者が増えるたびに、電波と設備を積み増す方法である。
電波を分ける仕組み
RAN(無線アクセスネットワーク)とは、スマートフォンなどの端末を、基地局を通じて通信網につなぐ部分である。無線の周波数は、地域と時間ごとに多くの利用者が共有する有限の資源だ。混雑した時に、誰へどの周波数を割り当てるかが通信品質を左右する。
現在の携帯通信網にも、基地局が利用者と周波数を制御する仕組みはある。ただし、端末とネットワークがAIで協調するには、端末の計算資源と電池、通信の遅れ、学習データの扱い、異なるメーカー間で機器を動かす相互運用が課題になる。
基地局だけでなく端末も判断する
NICTは2026年10月23日、Beyond 5G(6G)基金事業で、「端末/ネットワーク間のAI協調RANによる高効率無線アクセスネットワーク技術」の委託研究を公募した。端末側のAIとネットワーク側のAIを協調させ、無線アクセスネットワーク全体を最適化する方式を研究する。
これは、すでに実用技術が導入されたという発表ではない。端末だけ、あるいは基地局だけを賢くするのではなく、両方がその場の状況を見ながら通信を調整する方式に資金を投じ、実施者を選ぶ段階である。予算の上限は総額52億円で、研究は契約締結日から最長2030年度まで続く予定だが、2027年度の評価で継続の必要性が認められることが条件となる。
満員電車で通信を待たないために
この方式が成り立てば、満員電車で乗客が動画を見たり決済をしたりする時、端末と基地局が混雑に合わせて接続を配分できる。通信が止まるのを待つ時間を減らし、通信事業者は周波数や既存設備をより効率よく使える。端末とネットワークの協調制御を作る通信機器、半導体、ソフトウェアの供給者にも役割が生まれる。
ただし、端末と通信事業者の設備が相互運用できなければ、同じ電波と設備から通信を増やせない。AIが通信の遅れや消費電力、安全性を損なわずに動き、異なるメーカーの機器をまたいで協調できることが、この未来の条件である。
出典
NICT「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業 電波有効利用研究開発プログラムに係る令和8年度新規委託研究の公募(第2回)を開始」