2026年11月1日
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新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)

メタボローム解析は深夜を待たない

AI が描いたイメージ

微生物の一瞬の代謝を、人の勤務時間や手作業の違いから切り離す自動化が、菌株を比べる方法を変える。NEDO、神戸大学、島津製作所は、培養から試料調製までを統合し、培養液を約13秒で代謝停止用チューブに届けるシステムを開発した。実用化が進めば、発酵開発室では深夜の採取の代わりに、翌朝そろった記録で菌株の詰まりを比べられる。

微生物を使って食品素材や燃料などを作る研究では、夜中の培養槽が仕事場になることがある。細胞の中にある物質は、採取されてから数秒で変わるためだ。研究者は決めた時刻に試料を取り、すぐ冷やし、遠心分離し、抽出しなければならない。試料が増えるほど、採取時刻や手順の違いがデータに混ざる。人が都合よく働ける時間に取った試料だけでは、細胞が本当に変化した瞬間を比べられない。

細胞のその時を読む

メタボロームとは、細胞の中にある糖、アミノ酸、有機酸などの小さな物質をまとめて測る方法である。遺伝子の配列を見れば、細胞にどんな設計図があるかは分かる。しかし、その設計図の経路が実際に働いているか、原料やエネルギーがどこで詰まっているかまでは分からない。代謝物を測れば、細胞がその時点で行っている化学反応に近い情報を得られる。

これは、増殖速度だけで菌株を選ぶと見落とす違いでもある。産業利用される4種類の大腸菌では、増殖速度が似た時点でも、糖やアミノ酸、エネルギー関連物質の量と変化が大きく異なった。質量分析計が高性能でも、そこへ試料を運ぶ間に代謝状態が変われば、測定値は元の培養状態を表さない。

図2 4種類の大腸菌で異なる代謝物の変化(提供:神戸大学) 出典: 世界初の自動メタボローム解析システムを開発しました(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))

採取から抽出までを止めない

NEDO、神戸大学、島津製作所は、培養槽からの採取、代謝反応を止める処理、細胞の回収、抽出、分析プレートへの分注を一つの自動システムにまとめた。採取した培養液は約13秒で、代謝反応を止めるチューブに届く。その後の冷却遠心や液体の除去、搬送、分注、加熱振とう・撹拌による抽出も、設定した時刻に続けて行う。

培養槽、採取時刻、処理工程、分析プレート上の位置は、バーコードで結び付ける。温度や装置の動作、画像、試料IDも記録するため、誰かが夜間に秒単位で手を動かし続けなくても、同じ手順を繰り返せる。発表した側は、培養からメタボローム分析用試料の調製までを統合して自動化したシステムは世界初だとしている。

図1 開発した自動メタボローム解析システム(提供:神戸大学) 出典: 世界初の自動メタボローム解析システムを開発しました(新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO))

朝に比較できる開発室

この仕組みが長期運転でも同じように働けば、開発者は深夜や早朝に培養槽の前で試料を冷やす代わりに、翌朝、どの菌株で目的成分への経路が滞ったかを、同じ形式の記録で確認できる。食品工場に隣接した発酵開発室で、多数の菌株や培養条件を、人の勤務時間ではなく細胞の変化に合わせて比べられる場面が考えられる。

ただし、自動で測れることだけで生産性が上がるわけではない。データから改変する遺伝子や培養条件を正しく選び、その効果を実際の生産設備でも再現する必要がある。検出できない代謝物や分析結果の解釈、量産培養へのスケールアップも別の課題として残る。システムは神戸大学のDBTL型スマートセル開発拠点に実装され、企業が利用できる。

出典

NEDO「世界初の自動メタボローム解析システムを開発しました」