2026年11月1日
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科学技術振興機構(JST)

タイヌビエの抵抗性を本人で調べる

AI が描いたイメージ

タイヌビエの抵抗性研究は、候補遺伝子探しから、その遺伝子が雑草を生き残らせる原因だと雑草自身で証明する段階へ進む。研究グループは、タイヌビエへの遺伝子導入と植物体再生を可能にする安定形質転換系を世界で初めて確立した。実用化すれば、水田では地域の抵抗性の仕組みに合わせた防除手段を選べるようになる。

水田でタイヌビエが除草剤を逃れて残っても、その雑草を生き残らせた遺伝子を、研究者はタイヌビエ自身で確かめられなかった。候補となる遺伝子をモデル植物に移して調べる方法はある。しかし、モデル植物で起きた変化が、タイヌビエ固有の体の仕組みや薬剤の処理でも同じように起きるとは限らない。雑草の抵抗性を直接証明する道具が欠けていたのである。

雑草の遺伝子を確かめる方法

形質転換とは、植物の細胞に遺伝子を入れ、その細胞から遺伝的に改変された植物体を再生する技術である。候補遺伝子を加えたり、働きを弱めたりして、植物の姿や性質が変わるかを見る。変化が抵抗性と結びつけば、その遺伝子が原因かどうかを絞り込める。

除草剤への抵抗性は、薬剤が作用する標的の変化だけで起きるとは限らない。薬剤を分解したり、体内で運んだりする仕組みも関わりうる。水田で除草剤だけに頼ると、薬剤を生き残る個体が選ばれやすくなるため、効きにくくなった薬剤を繰り返し使う以外の手段が必要になる。

タイヌビエ自身で遺伝子を動かす

研究グループは、タイヌビエに遺伝子を導入し、そこから植物体を再生する安定した形質転換系を確立した。研究グループの発表では、タイヌビエでこの系を確立したのは世界で初めてである。これにより、モデル植物を代わりに使うのではなく、タイヌビエの候補遺伝子を加えたり、その働きを弱めたりして、抵抗性や環境への適応に関わる性質を調べられる。

壁は、抵抗性に関係しそうな遺伝子を見つけることから、その遺伝子が本当に雑草を生き残らせていると本人で証明することへ移った。研究成果は2026年10月14日付で「Plant Cell Reports」に掲載され、論文題目は「Development of a genetic transformation system in Echinochloa phyllopogon by particle bombardment」である。

水田で使える防除へ

この系を研究者が再現性よく使えれば、抵抗性や環境適応に必要な遺伝子を直接切り分けられる。そこから、新しい除草剤が狙う場所や、防除法の候補を選べるようになる。

水田では将来、農家がタイヌビエに効かなくなった薬剤を重ねて散布する代わりに、その地域の抵抗性の仕組みに合わせた防除手段を使う姿が考えられる。ただし、見つけた標的が、圃場にいる多様な個体群にも効かなければならない。安全な防除手段として製品や管理法に結びつくところまで確かめて、初めてこの道具は農家の減収を抑える手段になる。

出典

科学技術振興機構「世界初、稲作の強害雑草タイヌビエの形質転換系を確立~雑草自身で遺伝子の働きを直接証明へ~」