産業技術総合研究所(AIST)
表現型スクリーニングが未培養微生物を100万滴から連れ出す
微生物探しの壁は、自然界にいる菌を見つけることから、実際の働きで大量の候補を選ぶことへ移りつつある。長岡技術科学大学などの共同研究グループは、100万ドロップレット規模で有用な微生物を探して回収する表現型スクリーニングシステムを開発した。技術が安定して働けば、洗剤工場で選ばれた微生物が発酵槽で作った原料からボトル用成分が作られる。
有用な働きをする微生物の多くは、自然界では生きていても、試験管の中では育たない。研究者が扱えるのは限られた培養株であり、炭素を原料に化学品を作る菌を探すには、候補を一つずつ培養して調べる時間と費用がかかる。自然界にいる菌を、工場で使える候補として取り出すことは、まだ簡単ではない。
見えない微生物を働きで選ぶ
微生物を育てるには、その微生物が自然界で生きる条件を実験室内に再現しなければならない。多くの微生物では、それができない。DNA配列を読めば微生物の遺伝情報は分かるが、特定の原料から狙った物質を実際に作るかまでは直接分からない。
そこで使うのが、液滴マイクロ流体技術である。これは、細かな液滴を一つずつ小さな反応容器として扱い、多数の細胞や条件を同時に試す方法だ。増殖したか、色が変わったか、光ったか、目的の生成物を作ったか。こうした実際の働きで候補を選ぶ方法を、表現型スクリーニングという。
100万個の液滴を順にふるいにかける
長岡技術科学大学、産業技術総合研究所、広島大学、オンチップ・バイオテクノロジーズ、ニコンソリューションズの共同研究グループは、未培養・難培養微生物を可培養化し、有用な機能を持つ微生物を含む液滴を探して回収する技術を開発したとしている。
中心となるのは、100万ドロップレット規模で探索する「ミリオンスクリーニング技術」だ。多数の液滴をまず選別し、次に画像で状態を調べ、有望な液滴を回収する。この一次選別、画像による二次選別、回収を一連の工程として動かす装置にしたことで、少数の培養株を手作業で順番に試す探索から、より多くの微生物を実際の働きで探す探索へ移れる。
工場で使える菌になるまで
この工程が再現性よく使えれば、遺伝情報だけでは選びにくかった微生物を、実際の働きで候補にできる。未培養微生物を素材にしたい研究者やバイオ企業にとっては、培養株のコレクションだけでは得られない生物資源を探す道が広がる。炭素資源から化学品や素材、原料を作る微生物の一次選別も自動化しやすくなる。
例えば洗剤工場では、石油由来の原料だけに頼らず、選別された微生物が発酵槽で作った化学原料から、ボトル用の成分を作る景色が考えられる。ただし、そのためには回収した菌が大規模な培養槽でも安定して働き、製造コストと安全性の条件を満たさなければならない。培養条件の最適化や量産工程への移行も別に必要であり、微生物を見つけた時点で製品になるわけではない。