2026年10月19日
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日立製作所

日立のLLM最適化は最適解を一つにしない

AI が描いたイメージ

LLMによる最適化は、唯一の正解を当てる技術ではなく、異なる妥協案を並べて現場が選べるようにする技術になり得る。日立は複数KPIの候補を生成する学習技術を開発し、論理回路課題で候補の網羅率を最大13.3%高めた。実際の制約と安全条件を満たせれば、物流担当者は速さや省エネの異なる配車案を同じ画面で選べる。

鉄道の運行、配送、電力と計算資源の配分では、速さを上げると消費電力やコストが増え、安定性を優先すると別の性能を犠牲にすることがある。現場は複数の条件を一つの点数にまとめ、その点数が最も高い案を受け取ることが多い。条件が変わるたびにAIを学習し直す必要もあり、どの妥協を選ぶかを比べにくい。

画像: 図1 従来技術の課題と開発技術の効果
図1 従来技術の課題と開発技術の効果 出典: 社会インフラなどの運用管理最適化に向けて、相反する複数のKPIを考慮し、多様で有力な候補を生成するLLM学習技術を開発(日立製作所)

一つの点数では比べられない

LLMは、文章だけでなく設計や計画の案も生成できるAIである。KPI(重要業績評価指標)は、その案を測る物差しだ。たとえば回路なら、消費電力、処理速度、回路規模がKPIになる。

これらは同時に良くできないことがある。速い回路は電力を多く使うかもしれず、小さい回路は速度を落とすかもしれない。複数目的最適化では、こうした案を一つの順位に無理に並べず、互いに優劣を決めにくい候補群として比べる。

候補の違いも学習させる

日立が開発したのは、複数のKPIを一つの総合点に潰さず、異なるバランスの案を複数つくるLLMの学習技術である。LLM向け強化学習のGRPOに、ハイパーボリューム寄与度という指標を組み合わせた。これは、候補群が複数の物差しでどれだけ広い範囲をカバーしているかを測るものだ。

AIは、前回までに出した候補を見ながら次の候補をつくる。その新しい案が候補群全体の性能を高め、しかも似ていない案を加えたかを評価して学習する。結果として、特定の重み付けに偏った案だけでなく、速さを優先する案、省エネの案、規模を抑えた案を並べることを狙う。論理回路の生成では、学習前のモデルに比べ、候補の網羅率が最大13.3%向上したという。ただし、これは性能を自動採点しやすい回路課題での結果である。

画像: 図2 複数の有力な候補をLLMに生成させる学習技術の概要
図2 複数の有力な候補をLLMに生成させる学習技術の概要 出典: 社会インフラなどの運用管理最適化に向けて、相反する複数のKPIを考慮し、多様で有力な候補を生成するLLM学習技術を開発(日立製作所)

現場で選べる案になるまで

この技術が実運用の制約や予測の不確かさ、安全条件を含めて有効なら、物流センターの配車担当者は、締め切りを守る案、電力料金の高い時間帯を避けて充電する案、車両の余力を残す案を同じ画面で比べられる。設計室では、同じ機能を満たす回路を、電池を長持ちさせる案、速い案、小さな基板に収める案から選べる。

ただし、候補が現実の車両、道路、契約、労務の制約を満たすかを検証し、既存の最適化ソフトや運用システムにつなぐ必要がある。失敗時の責任分担も決めなければならない。価値は唯一の最適解を自動採用することではなく、状況が変わる現場に、選べる妥協案を残すことにある。

出典

日立「社会インフラなどの運用管理最適化に向けて、相反する複数のKPIを考慮し、多様で有力な候補を生成するLLM学習技術を開発」