新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
ドロップレット培養で100万候補を6時間で選ぶ
微生物探索の核心は、候補を大量に選ぶことではなく、これまで培養できなかった微生物を生きた株として回収できるかにある。研究チームは、微生物を小さな液滴で培養し、約100万個を選別・回収する工程をつないだ。実用化すれば、土壌微生物由来の酵素が洗剤の原料になる日も、株を安全に量産できる条件で開ける。
有用な微生物や酵素を探す仕事は、いまも一つずつ培養して調べる作業である。候補が多ければ、探索は数か月から年単位になる。しかも環境中の微生物の多くは、通常の条件では増えない。働きが分かる前に、候補からこぼれ落ちていた。
増えるかどうかを実際に測る
バイオものづくりでは、目的の酵素や物質をつくる微生物を見つけることが、育種や量産の出発点になる。遺伝子の配列から働きを予測できても、実際の培養で増えるか、どれだけ酵素をつくるかは測らなければ分からない。
そこで使うのがドロップレットである。直径数十〜100マイクロメートルほどのゲルや水滴に、微生物を封じ込める。液滴一つを小さな培養容器にして、多数を同時に調べる方法だ。ただし、良い反応を示した液滴から、生きた微生物を取り出して次の培養につなげられなければ、発見はそこで終わる。

小さな容器を選別装置にする
研究チームは、微生物を液滴の中で増やし、増殖や酵素活性、生産能力を測りながら選び、回収する工程をつないだ。微生物を凝集させたり高密度で培養したりすることで、環境中の微生物の最大約50%を培養可能にできるとしている。
大学構内の土壌試料では、約100万個の液滴を6時間で解析・分取し、エンドペプチダーゼの活性が高い細菌4種を得た。そのうちLysobacter soliの1株からは、市販のペプチド解析用工業酵素の2.4倍の活性を持つ新しい酵素を単離した。高速な一次選別、画像と機械学習による二次選別、プレートへの分注と回収を組み合わせた仕組みである。

洗剤の酵素が土壌から来る日
この仕組みが環境試料でも再現され、製品化後も安定して動けば、探索は少数の既知株を順に調べる仕事から、大規模な候補群を短期間で絞る仕事へ変わる。洗剤売り場では、家庭で使う洗剤の酵素が、かつては培養できず調べられなかった土壌微生物から見つかったものになるかもしれない。
ただし、見つけた株を工業規模で安定して培養し、生産工程に載せる課題は残る。発見株が安全に量産でき、既存製品の性能や価格を満たすことが条件である。2027年度からテスト運用を始め、同年度末の製品化を予定している。