2026年10月19日
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欧州宇宙機関(ESA)

火星探査車が走行する間に科学者が掘削地点を選ぶ

AI が描いたイメージ

火星探査車の限られた運用時間は、あらゆる障害物を避けて操縦する代わりに、掘削地点の選定に使える。スペインのタベルナス砂漠では、試作機チャーリーが、科学者がそのデータから探査対象を選ぶ間に、ナビゲーション誤差1%未満で60メートル超を自律走行した。2030年の着陸後もシステム全体の信頼性が保たれれば、トリノの管制室が科学観測対象を承認する間に、探査車は安全な地面を自力で横断できるようになる。

火星の探査車は、進路を誤っても救助してもらえない。運用担当者は、宇宙を隔てて送られてくる限られたデータから、斜面や危険箇所、科学的に有用な対象を見極めなければならない。写真では安全そうに見える進路が、車両を立ち往生させたり損傷させたりすることもあり、失われた1日は取り戻せない。難しいのは探査車を動かすことだけではない。ミッションの時間が尽きる前に、その日の測定結果を次の一連の判断へ変えることだ。

走行は問題の半分にすぎない

火星探査車のミッションは、指令サイクルで進む。チームがデータを受け取り、解釈し、計画を選び、探査車が後で実行する指示を送る。この遅れがあるため、科学者はラジコンカーを操縦するように、石を一つずつ避けながら単純に走らせることはできない。

自律的な障害物回避ソフトウェアは、探査車が近くの場所へ安全に移動するのを助けられる。しかし、どの岩や地面の一帯を調べる価値が最も高いかを決めることはできない。古代の微生物生命の痕跡を探すには、地質学的な文脈と複数の機器による測定が必要だ。探査車は、到達できる場所ならどこでもよいのではなく、適切な種類の場所に到達しなければならない。

そのため、科学者の仕事は走行と密接に結びついている。科学者は画像、地下レーダー、分光分析をまとめて読み取り、対象と、そこで使う機器の両方を選ぶ必要がある。

Commanding a rover from control centre
](https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2026/10/Commanding_a_rover_from_control_centre) [Commanding a rover from control centre ](https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2026/10/Commanding_a_rover_from_control_centre) The 20-day test campaign was a unique first-hand opportunity to process daily data downlinks and evaluate technologies and procedures in a realistic, demanding environment. 出典: European rover trains for Mars in the desert(欧州宇宙機関(ESA))

火星に向けた砂漠での予行演習

9月、約100人の科学者と技術者が、スペインのタベルナス砂漠でこの一連のプロセスを試験した。チャーリーと名付けられた試作探査車は、ロザリンド・フランクリン探査車向けのガイダンス、ナビゲーション、制御ソフトウェアを使った。科学チームは、約1,200キロメートル離れたイタリア・トリノの探査車運用管制センターから作業した。

この試験では、飛行用に近いナビゲーションソフトウェア、試作機器一式、そして砂漠と管制室に分かれたチームを組み合わせた。科学者はチャーリーのデータを使い、生命の証拠を探す場所を選んだ。同時に、運用担当者は進路を計画した。

6日目、チャーリーは自力で60メートル超を走行し、ナビゲーション誤差は1%未満だったと、探査車運用責任者は述べている。この結果は、火星ミッションが人の操作なしで運用できる準備が整ったことを意味しない。短い距離を進むための方法が、ジョイスティックのような連続的な手動操縦だけではなくなったという意味だ。

チームは、異なる種類のデータが重要な理由も目にした。探査車のデータからは最初、危険と判断された斜面が、数値標高モデルによって緩やかな傾斜だと示された。2次元画像によって、地形は実際よりも危険に見えていた。より良い情報があれば、慎重な停止を安全な進路に変えられる。

この演習は20日間続き、毎日のデータ・ダウンリンク、技術確認、厳しい環境での運用手順の検証が含まれていた。ある日は雨で試験が中断した。その中断が起きたのは地球でのことだが、火星でのより大きな課題は、実際の地形と通信システムを使って、指令プロセス全体を機能させることになる。

Rover's science room
](https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2026/10/Rover_s_science_room) [Rover's science room](https://www.esa.int/ESA_Multimedia/Images/2026/10/Rover_s_science_room) The science team at the Rover Operations Control Centre (ROCC) in Turin, Italy, relied on images, subsurface radar and spectral analysis from the rover to identify the most promising locations to search for evidence of life – Rosalind Franklin’s main mission objective. 出典: European rover trains for Mars in the desert(欧州宇宙機関(ESA))

管制室の朝

これらの手順が、現実に近づく試験の中でも信頼性を保てれば、ロザリンド・フランクリンのチームは、火星での運用時間の多くを、あらゆる障害物を手動で避けて操縦する代わりに、どこを掘削し分析するかの選定に使えるようになる可能性がある。トリノの管制室では、地質学者が朝、探査車のパノラマ画像とレーダーの波形を確認し、対象を承認すると、探査車が一晩のうちに安全な地面をすでに横断していたと知ることになるかもしれない。

この未来は、ロザリンド・フランクリンが2030年に着陸すると見込まれた後、複数の要素が連携して機能することにかかっている。探査車、その機器、指令系統、自律ナビゲーション、そしてExoMars微量気体周回機を介した通信だ。2027年夏に予定されている次のフィールド試験では、その周回機に関わる課題が加わる。

したがって、この変化は人間から機械への移行ではない。人間が1メートルごとに操縦する状態から、ソフトウェアが近距離の移動を処理する間に、人間が探査車に何を調べさせるかを決める状態への移行だ。システムが機能し続ければ、その利点は、科学チームだけが答えられる問いに、より多くの時間を使えることになる。まずは、日々の科学・指令プロセスと自律ナビゲーションが、実際の火星の通信環境と地形の下でも信頼性を保たなければならない。

出典

欧州宇宙機関(ESA)「European rover trains for Mars in the desert」