日立製作所
回路図AIは配線をデータにする
図面AIの本当の前進は、部品を見つけることではなく、線のつながりを検索できるデータに変えることだ。日立は回路図とMermaid形式の構造データ約8万組でAIを追加学習し、接続関係の認識精度を従来手法の約20%から約80%に高めた。実際の図面でも余分な接続を人が除ければ、深夜の工場で停止したポンプの接続先や点検手順を端末からたどれる可能性がある。
工場やインフラの図面は、部品名を読めるだけでは役に立たない。線がどこにつながるかを一つ間違えれば、故障の影響範囲や作業手順まで誤るからだ。いまは複雑な接続を熟練者が目でたどり、紙や画像の中にある知識を人が確認している。
線の意味をデータにする
視覚言語モデル(LVLM)は、画像の中の物体や文字を説明するAIである。しかし、細い線が交差する技術図面で、正確な接続を追うのは別の課題だ。日立が使ったMermaidは、機器を「ノード」、それらを結ぶ関係をテキストで表す図表記法である。図面をこの構造化データにできれば、AIは部品名だけでなく、どの機器とどの機器がつながるかを検索や推論に使える。
見た目を読むAIから関係を出すAIへ
日立は、回路図の画像と、同じ接続関係をMermaid形式で記したデータを組み合わせ、LVLMを追加学習した。回路図と構造データ約8万組を使い、画像からもっともらしい答えを推測するだけでなく、部品間の接続を構造として出力させる発想である。同社によると、接続関係の認識精度は従来手法の約20%から約80%に上がった。
より複雑な図面では、全体を見るAIと、部品や接続を個別に調べる複数のAIエージェントを組み合わせた。接続の見逃しは大幅に減ったが、実際にはない余分な線を出す「ハルシネーション」は残る。モデルは比較的小規模で、日立はローカルのデータセンターで運用できるとしている。機密図面を外部のクラウドへ送らずに済む点も、現場で使う条件になりうる。

図面が現場の知識になるまで
この精度が配管図や配電図、プラント図面でも保たれれば、図面は検索や照合ができる保守知識になる。深夜の工場で保全員が停止したポンプを端末で選ぶと、接続先の機器、過去の点検記録、確認すべき手順が図面に重なる。日立は設計書や手順書、点検履歴とも組み合わせ、保守やフィジカルAIへの利用を目指している。
ただし、図面の読解結果を現場の条件で確かめ、誤った接続を安全に排除できなければならない。現場ごとの図面様式への適応と、人が確認すべき判断範囲の設計が残っている。

出典
日立製作所「大規模視覚言語モデル(LVLM)により、図面を正確に読める生成AI学習技術を開発――接続関係を理解し技術継承とフィジカルAIへの活用につなげる」