国防先端研究計画局(DARPA)
DARPAのリフト・チャレンジ、垂直飛行と貨物の反復輸送を競わせる
垂直貨物飛行は単純な重量のトレードオフを超えようとしているが、競技用航空機はその約束に意味を持たせる前に、信頼できる製品にならなければならない。DARPAのリフト・チャレンジはペイロード対重量比を使い、現在の重量基準の4倍を持ち上げられる航空機を目指している。その向上が安全性、コスト、製造の試験を通過すれば、洪水で孤立した農村診療所に医療物資が建物のすぐ脇まで直接届けられる。
垂直貨物機は重い荷物を単純に持ち上げて飛び去ることはできない。何かを運ぶ前に、空中にとどまるための動力を使わなければならない。ローター、エンジンなどの推進システム、機体構造、燃料やバッテリーはすべて重量を増やす。DARPAによると、現在の垂直飛行機は自重と同程度の重量しか持ち上げられない。そのため物流事業者は、少量の荷物で飛行回数を増やすか、地上ルートで貨物を運ぶかという難しい選択を迫られる。
重量の問題
このチャレンジの中心となる指標は、ペイロード対重量比である。「ペイロード」とは有用な貨物を指し、それ以外の重量は機体と、機体を飛ばし続けるものに属する。この比率が高ければ、1回の飛行でより多くの物資を届けられる。
しかし、数字が大きいだけでは役に立つ航空機にはならない。安全で操縦可能であり、十分な時間空中にとどまり、保守でき、認証を受け、製造できなければならない。こうした条件があるため、垂直貨物飛行は最も軽い機体を造る競争以上のものになる。
限界を競争に変える
DARPAはこのトレードオフを公開型のリフト・チャレンジのテーマにした。運営を担うのは、同機関の戦術技術室で航空ドローンプログラムを管理するフィリップ・「ドナ」・スミスである。このチャレンジは、ペイロード対重量比を指標として始まった。DARPAの考えでは、より優れた空気力学、新素材、改良された飛行制御によって、航空機は現在の重量基準の4倍を持ち上げられる可能性がある。
これは提案された道筋であって、完成した航空機の能力ではない。2026年の競技は、2028年に向けたより大きな目標を追求するために使われている。スミスによれば、目的は実証機を作ることだけではない。DARPAが求めているのは、実際の用途、商業化、製品化である。つまり、競技場でしか動かない一回限りの機体ではなく、信頼できる製品になりうる設計である。
仕組みを説明するのは簡単だが、実現は難しい。貨物にならない重量を減らしながら、垂直飛行に必要な制御性と強度を十分に保つのである。こうした改良がまとまって機能すれば、1機の航空機が1回の飛行で、はるかに多くの有用な物資を運べる。すると、少ないペイロードで何度も飛ぶ価値は下がり、効率的な貨物輸送を軸に設計された機体が優位に立つ。

競技場から診療所へ
最も明確な試験となるのは、使える滑走路がない場所である。洪水で孤立した農村診療所では、垂直貨物機が建物のすぐ脇に医療物資を降ろせる。作業員がトラックの車列を待ったり、何度も行われる小規模な飛行から荷物を降ろしたりする必要はない。軍や災害救援の事業者も同じように、地上輸送が遅いか、より安全でない場所へ、より少ない航空機で多くの物資を運べる。遠隔地のコミュニティーや現地チームは、遠くの滑走路から積み替えるのではなく、重い物資を直接受け取れる。
この未来は、約束された比率だけにかかっているわけではない。航空機は安全で操縦可能な状態を保たなければならず、設計はコストと大量製造の試験に耐えなければならない。決定的な一歩は、競技用の設計を信頼できる製品に変えることである。それまでは、リフト・チャレンジは根強いトレードオフに挑む工学上の競争であり、垂直貨物飛行がすでにその制約から逃れた証拠ではない。
出典
Defense Advanced Research Projects Agency, “The Vertical Lift Challenger | Ep 97”